断熱材の厚みは何ミリ必要?ZEHに近づく“最適バランス”を専門家が解説|素材・付加断熱との組み合わせが鍵(後半)

前半では、断熱材の厚みがどのように決まり、なぜ厚みだけではZEHに届かないのかを整理しました。
しかし実際のリフォームでは「壁の厚みが足りない」「必要な断熱材のサイズが入らない」といった制約があり、理想の厚みをそのまま実現できないことが多くあります。
後半では、こうした課題を解消するための方法として付加断熱の活用や、ZEHに近づけるための“厚み×素材”の最適バランスについて詳しく解説します。
さらに、既存住宅で取り入れやすい組み合わせ例や、外皮性能を安定させるための考え方もご紹介します。
自宅の条件に合わせた断熱計画を立てたい方は、ぜひ参考にしてください。
>>厚みより「断熱材の性能(λ値)」が重要な理由については“ZEH×断熱材の厚みまとめ前半”をご覧ください。
④:付加断熱で厚みを確保する方法

既存住宅では壁内に十分な厚みを確保できないケースが多く、「必要な厚みを入れられない」という悩みがよく発生します。
この問題を解決する方法が付加断熱(外張り断熱)です。
外側に断熱層を追加することで、壁内に収まらない厚みを確保でき、ZEH向けの性能を達成しやすくなります。
中見出し:付加断熱は“壁内の制約”を越えられる
既存住宅の壁内には限界があります。
| ・105mm壁→断熱材は一般に約90mm前後が目安・ツーバイフォー→スタッドの幅でほぼ固定・壁内結露リスクがあるため、無理に厚みを増やせない |
こうした制約を避けるため、壁の外側に断熱層をつくる付加断熱は非常に合理的です。
付加断熱で得られる主なメリット
付加断熱は厚み確保だけでなく、ZEHに向いた複数のメリットを持っています。
■付加断熱の効果
| ・必要な厚みを確実に取れる・外気側の温度変化を受けにくくなり、壁内結露のリスクを抑えやすくなる・室内側の温度が安定して冷暖房負荷が低減する・気密施工と相性が良く、性能値が安定しやすい |
厚み不足でZEH外皮が達成できない場合も、付加断熱を組み込むことで性能確保に大きく近づけます。
外張り断熱と付加断熱の“違い”
似た言葉でも意味は少し異なります。
| 用語 | 概要 | メリット | 注意点 |
| 外張り断熱 | 断熱材のみで外壁全体を覆う工法 | 断熱連続性が高い、熱橋が少ない | 工費が高い、施工できる会社が限られる |
| 付加断熱 | 壁内断熱+外側に追加で断熱材を施工 | 壁内の制約を補える、費用を抑えやすい | 既存外壁の状態で工法が変わる |
リフォームで一般的なのは壁内断熱+外側に追加する「付加断熱」です。
付加断熱に向いた断熱材の種類
付加断熱では、次のような“高性能で耐久性のある素材”が選ばれることが多いです。
| ・フェノールフォーム(λ≒0.020前後)・硬質ウレタンフォーム・押出法ポリスチレンフォーム(XPS) |
これらはいずれも断熱性能が高く、薄い厚みでもZEH基準の性能に近づけます。
付加断熱で注意したいポイント
付加断熱は非常に有効ですが、施工条件によっては注意すべき点もあります。
■主な注意ポイント
| ・外壁材の種類(サイディング・モルタル)で工法が変わる・外壁を剥がすか、重ね張りするかの判断が必要・厚みを増やすと軒天や開口部の納まりが変わる・結露計算が必須(断熱位置が変わるため) |
ZEHの外皮性能は“厚みだけでは決まらない”ため、施工前の計画が非常に重要です。
⑤:厚みだけではZEHにならない理由(外皮バランス)

断熱材を厚くすることは効果がありますが、厚みだけではZEH外皮性能には届きません。
ZEHは「断熱×窓性能×日射遮蔽×気密×家の形状」の総合点で決まるため、どこか一部が弱いとUA値やηAC値が伸びないからです。
外皮性能は“断熱材だけでは決まらない”
ZEH外皮は住宅全体で評価されるため、厚みはあくまで“要素の一つ”です。
| 外皮性能を左右する要素 | 影響ポイント |
| 窓性能(ガラス・サッシ) | 熱の出入りが最も大きい。ZEH値に直結 |
| ガラス面積 | 面積が大きいほどUA値が伸びづらい |
| 屋根・壁・床の断熱性能 | 厚みより素材性能の影響が大きい |
| 日射遮蔽 | ηAC値の改善に不可欠 |
| 家の形状・開口部位置 | 外皮面積と負荷のバランスを左右 |
厚みだけではZEHに届かない理由が明確になる構造です。
窓性能が弱いと厚みの効果が“打ち消される”
特に東京23区では窓の影響が非常に強く、外皮性能の改善に影響しやすい部分です。
| 状況 | 起きやすい現象 |
| 壁だけ厚くした | それでも窓がアルミ単板だとUA値が伸びない |
| 窓面積が大きい | ηAC値が基準に届かないケースが多い |
| 夏の日射が強い | 厚みより窓性能を上げた方が効果が大きい |
「厚みを増やしたのに変わらない」という相談の多くは、窓の性能不足が原因です。
中見出し:日射遮蔽が弱いと、厚みを増やしても暑さは改善しない
夏の東京では、断熱だけでは冷房負荷を十分に下げられません。
特に以下の条件では、厚みを増やしても体感が改善しづらくなります。
| 住まいの条件 | 起きる問題 |
| 南西面の大きな窓 | 日射が直接入りηACが悪化 |
| 道路側の掃き出し窓 | 庇がなく熱が室内に侵入 |
| 3階リビング | 上階に熱がこもりやすい |
厚みよりも「遮蔽」で改善できるケースが多いのがポイントです。
気密性が低いと厚みのメリットが半減する
断熱材の厚みをどれだけ増やしても、気密が伴わなければ十分な効果が得られません。
| 例: ・壁内で空気が動き、熱が伝わってしまう・屋根裏に外気が入り、断熱層が活かせない・床周りのすき間から冷気が侵入する |
ZEHに近づけるには、「断熱材の厚み」×「気密施工の正確さ」という掛け算が欠かせません。
外皮バランスの“弱点”を補うことがZEHへの最短ルート
厚みを増やすだけでは不十分で、ZEHに近づくには次のバランスが必要です。
| ・窓:性能向上でUA値を大きく改善・屋根:厚みで外皮を稼ぎやすい・壁:厚み+素材性能+付加断熱・床:工法選択で性能が決まる |
つまりZEH外皮では「厚みを増やす」だけでなく、“どこで性能を稼ぐか”を設計することが重要です。
⑥:ZEH向け“厚み×素材”の最適組み合わせ

ZEH基準の外皮性能を安定して満たすには、「厚み」だけでも「断熱材の性能」だけでも不十分です。
両者をどう組み合わせるかが最終的なUA値を決めるため、ZEH向けリフォームでは厚み×素材の最適バランスが非常に重要になります。
以下では、屋根・壁・床それぞれについて、ZEH向けに効果的な組み合わせを紹介します。
屋根は「厚みを多めに×高性能断熱材」の組み合わせが最適
屋根は日射負荷が大きく、厚みの効果が出やすい部位です。
そのため、ZEHを目指す場合は次のような組み合わせが有効です。
| 組み合わせ例 | 特徴 | ZEHとの相性 |
| フェノールフォーム150〜200mm | λ値が非常に小さく、薄くても高性能 | 夏のηACが大きく改善 |
| 高性能グラスウール240mm相当 | コスパが良いが厚みが必要 | 施工精度に左右されやすい |
| フェノール+遮熱シート併用 | 日射を外側でカット | 温度上昇が大幅に低減 |
屋根は厚みが取りやすいため、高性能品と厚みの両立が最も効果を発揮します。
壁は「厚みが取りにくい」ため“素材の性能”が最優先
既存住宅は、壁内に入れられる断熱材の厚さが限られています。
このため、壁は厚みよりも素材性能の影響が大きく、ZEH向けには高性能断熱材の採用が欠かせません。
| 部位 | 推奨組み合わせ | 理由 |
| 壁内 | 高性能グラスウール90mm/フェノールフォーム50mm | 限られた厚みで性能を確保 |
| 壁外(付加断熱) | フェノールフォーム30〜50mm | 断熱欠損を防ぎ外皮バランスを安定 |
厚みを十分に確保できない家では「壁は素材重視」が鉄則です。
床は「工法」×「素材」の組み合わせが重要
床は厚みを増やすことが難しく、工法によって性能が大きく変わります。
| 工法 | 素材の組み合わせ | 特徴 |
| 床断熱 | XPS(押出法ポリスチレンフォーム) | 施工性が良いが断熱欠損に注意 |
| 基礎断熱 | XPS+気密パッキン | 外周部で囲うため厚みに依存しにくい |
床は厚みよりも「どの工法を採用するか」がZEH性能に直結します。
ZEH向けの“厚み×素材”の総合バランス例
以下は東京23区の戸建てで、ZEH外皮に近づけるための代表的な組み合わせ例です。
| 部位 | 推奨厚み(目安) | 素材 | ポイント |
| 屋根 | 150〜200mm | フェノールフォーム/高性能GW | ZEH外皮の要となる部分 |
| 壁(内) | 90mm前後 | 高性能GWまたはフェノール | 厚みが取れないため素材優先 |
| 壁(外) | 30〜50mm | フェノールフォーム | 付加断熱で性能の底上げ |
| 床 | 工法による | XPS | 気密とのセットで性能が安定 |
厚みと素材の“どちらか”ではなく、“どう組み合わせるか”がZEH外皮の成否を決めます。
⑦:まとめ

断熱材の厚みは重要ですが、それだけではZEHの外皮性能には届きません。
素材の性能(λ値)、窓、日射遮蔽、気密性、付加断熱など複数要素が組み合わさって初めてUA値が整います。
特に既存住宅は「壁内の厚みに限界がある」ため、厚みを増やせる屋根で性能を稼ぎ、壁は高性能断熱材や付加断熱で補うなど、部位ごとに最適なバランスを考えることが欠かせません。
断熱リフォームを成功させるポイントは“厚みをどこで確保し、素材性能でどこを補うか”という外皮バランスを正しく設計することです。
■FAQ
| Q1.厚みを増やせばZEHになりますか?A.なりません。窓性能・日射遮蔽・気密性など外皮全体のバランスが必要です。 Q2.付加断熱をすれば既存住宅でも性能は上がりますか?A.はい。壁内の制約を補えるため、ZEHレベルに近づきやすくなります。 |
東京都23区で断熱リフォームを検討している方は、外皮計算や補助金の可否まで一緒に見ながら進めると失敗を防げます。
断熱性能をしっかり高めたい場合は、専門家に相談しながら計画するのが安心です。
| ファミリー工房では、ZEHリフォームの施工はもちろん、補助金の申請から書類提出、完了報告までをワンストップで承ります。 施主様は面倒なお手続きなく、快適な住まいを手に入れられます。無料で現地調査・お見積もりを承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください! >>無料お見積もり・ご相談はこちら|ファミリー工房 |

- 監修者
- 大久保 洋司
Director
【保有資格】
一級建築士
監理技術者
マンションリフォームアドバイザー
既存住宅状況調査技術者
既存住宅アドバイザー

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約30年と経験豊富な建築士です。
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