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断熱等級5とは?都市部でも実現できる性能の基準と“ZEHとの違い”を専門家が解説(後半)

前半では、断熱等級5の基本やZEHとの違い、リフォームで達成する際のポイントをご紹介しました。

とはいえ「具体的にはどんな仕様を採用すればいいのか」「部位ごとの基準や違いが知りたい」という方も多いでしょう。

後半では、断熱等級5に近づけるための“外皮別の推奨仕様”を詳しく解説。

また窓・屋根・外壁・床のどこをどのように強化すればよいのか、都市部の住宅事情も踏まえて整理します。

外皮性能を底上げし、四季を通して快適な住まいを実現するための具体策をまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

>>断熱等級5のメリット・デメリットやUA値・ηAC値については“ZEH断熱等級5まとめ前半”をご覧ください。

⑥:断熱等級5を実現する仕様(窓・屋根・外壁・床)

断熱等級5は外皮全体の性能で評価されるため、どこか一箇所だけ性能を高めても到達しません。

ここでは、各部位で必要となる仕様を表で整理したうえで、なぜその仕様が必要なのかを丁寧に解説します。

窓(樹脂サッシ+Low-E複層が基本)

■等級5を狙うための窓仕様比較

項目等級4(一般的)等級5(推奨仕様)補足
サッシアルミ+樹脂複合樹脂サッシフレームの断熱性が大幅に向上
ガラス一般複層ガラスLow-E複層(断熱or遮熱)大開口には遮熱が特に有利
施工方法内窓設置が中心外窓交換が最も効果的だが、コストとのバランスで判断が必要内窓のみでは外皮評価を満たしにくい

●解説

窓は家の中で最も熱の出入りが大きい部分で、夏冬の快適性に直結します。
特に樹脂サッシはフレーム部分の断熱性能が段違いに高く、UA値改善に大きく寄与します。

また、東京23区のように夏の日射負荷が強い地域では、遮熱タイプのLow-EガラスがηAC値の改善に大きく貢献します。


既存住宅で断熱等級5相当を目指す場合は、内窓よりも外窓交換が最も効果的です。

外壁(高性能断熱材+付加断熱で外皮を底上げ)

■外壁仕様の比較

項目等級4(一般的)等級5(推奨仕様)特徴
断熱材一般グラスウール高性能グラスウール(熱伝導率(λ値)が低くなり性能が高い)熱伝導率が低く性能が高い
断熱方法内側充填断熱外張り断熱(付加断熱)+充填断熱断熱欠損を減らせる
施工難易度低〜中中〜高外壁張替時が最適

●解説

外壁は外皮面積が広いため、断熱材の種類と厚みがUA値を大きく左右します。


特に付加断熱は、既存の断熱層に外側から厚みを加えられるため、外皮性能の底上げに非常に効果的です。

ただし、外壁リフォームと同時でないとコスト効率が悪いため、「外壁の張り替え時にまとめて付加断熱を行う」というタイミング戦略が重要になります。

屋根(厚み追加・外断熱・遮熱ルーフィング)

■屋根仕様の比較

項目等級4(一般的)等級5(推奨仕様)効果
断熱材の厚み100mm前後150〜200mm冬の熱損失を大きく抑える
断熱方法充填断熱外断熱or付加断熱断熱欠損を減らす
日射対策標準ルーフィング遮熱ルーフィング夏の熱ごもりを大幅低減

●解説

屋根の強化は、夏の快適性を左右する最重要ポイントです。


3階建ての最上階は「屋根直下」であるため、日射の影響を強く受けます。

外断熱は屋根の外側に断熱材を配置するため、以下のメリットがあります。

・熱橋(構造材を通じて熱が伝わる部分)を抑えられる
・断熱の欠けが少なく外皮性能が安定する


さらに遮熱ルーフィングを併用すると、屋根表面温度の上昇を大きく抑えられることもあり、ηAC値の改善に直結します。

床(基礎断熱/高性能床断熱)

■床仕様の比較

項目等級4(一般的)等級5(推奨仕様)備考
断熱材一般断熱材高性能断熱材(XPSなど)λ値が低く熱が逃げにくい
工法床断熱基礎断熱体感温度に強く影響
効果冬の底冷え軽減室温の安定・底冷え改善UA値への影響は中程度だが、体感温度への影響は大きい

●解説

床はUA値への影響が比較的小さめですが、体感温度に直結します。


特に底冷えの強い住宅では、基礎断熱を採用することで室内の温度ムラが大きく改善します。

しかし基礎断熱は気密を確保しないと逆効果になりやすいため、施工精度と換気計画がセットで重要です。

等級4→等級5“ジャンプアップ”の総まとめ

部位等級4の一般仕様等級5を目指す仕様重要度
窓複合サッシ+複層樹脂サッシ+Low-E複層★★★★★
外壁一般断熱材高性能断熱材+付加断熱★★★★☆
屋根100mm断熱材150〜200mm+遮熱仕様★★★★☆
床標準床断熱高性能床断熱or基礎断熱★★★☆☆

●解説

この表からも分かる通り、窓→外壁→屋根の順に等級5への貢献度が高く、床は体感向上の要素が強めです。


リフォームで等級5相当を目指す場合は、

・窓でUA値+ηAC値を改善・外壁・屋根で外皮全体の性能を底上げ

という“外皮の総合設計”が重要になります。

⑦:断熱等級5+日射遮蔽のセットが都市部では重要になる理由

断熱等級5は外皮性能を大きく向上させますが、都市部の住宅では“断熱強化だけ”では夏が暑くなりやすいという問題があります。

これは東京23区という立地特性が大きく関係しています。ここでは、断熱等級5と日射遮蔽をセットで考えるべき理由を整理します。

都市部は「夏の熱ごもり」が起こりやすい

東京23区はヒートアイランド現象の影響が強く、夏季の外気温が高くなりやすい地域です。

断熱等級5の家は外からの熱を遮断する一方で、いったん入り込んだ熱が逃げにくくなるため、外気温が高い都市部では次の現象が起こりやすくなります。

・日射が室内に入り込むと熱がこもりやすい・最上階の天井付近に熱が滞留する・夜になっても外気温が下がらず冷房効率が落ちる

断熱自体は正しい改善ですが、都市部では“断熱を強くした分だけ日射遮蔽が必須になる”という状況が生まれます。

ηAC値(夏の性能)が都市部では特に重要

断熱等級5の評価項目であるηAC値(夏の日射侵入率)は、都市部の住宅性能に極めて重要です。

都市では南・西面の大開口窓が多いことに加え、近隣の建物反射光が入るケースもあります。

■ηAC値悪化につながる要因

・西面・南面に大開口がある・遮熱タイプではなく断熱タイプのLow-Eを採用・外付けの日射遮蔽が弱い・白っぽい外壁の反射光が隣家から入る

断熱材を増やしても、ηAC値が高い(=日射取得が多い)状態のままなら快適性は安定しません。

都市部では「窓の遮蔽」が最もコスパが良い

断熱等級5を満たすためには、窓の性能強化が欠かせませんが、夏の快適性については窓の“日射遮蔽”が最もコスト効率の良い対策になります。

■遮蔽効果の比較(代表的な方法)

方法遮蔽効果特徴既存住宅への適性
外付けブラインド★★★★★熱を外で止めるため効果が高い高い
アウターシェード★★★★☆施工性が高く費用が抑えられる非常に高い
庇(ひさし)★★★☆☆南面の夏の日射を防ぎやすい新築・大規模改修向け
室内ブラインド★★☆☆☆室内側で熱がこもる気軽だが効果は限定的

最も重要なのは“熱を室内に入れない”という発想です。

室内ブラインドは眩しさは防げても熱を十分に防ぎきれないため、都市部では外付け遮蔽との組み合わせが理想です。

断熱強化と日射遮蔽をセットにすると夏冬の快適性が安定する

都市部で求められる住宅性能は、冬の快適性だけでなく「夏の暑さをどれだけ抑えられるか」が重要です。

断熱等級5+日射遮蔽をセットにするメリットは以下のとおりです。

・冷暖房効率が安定する・冷房の消費電力が大幅に減る・最上階の天井付近の温度が下がる・窓の近くの体感温度が安定する

特に3階建て・南西向き住宅では効果が顕著で、「断熱等級5の外皮性能×窓の遮蔽」という組み合わせが、都市部の最適解と言えます。

⑧:断熱等級5に近づける“現実的なリフォーム計画”

既存住宅で断熱等級5そのものを取得するのは構造的な制約があり難しいケースも多いですが、“等級5相当の快適性”に近づけることは十分可能です。

ここでは、無理なく現実的に進めるための計画の立て方をまとめます。

ステップ①現状の外皮性能を把握する

最初のステップは「今の家の弱点がどこか」を知ることです。


断熱等級5相当を目指す計画は、外皮全体を見て改善点を洗い出すところから始まります。

■現状把握のポイント

・窓の仕様(単板/複層/Low-E/サッシの材質)・外壁断熱の種類と厚み・屋根断熱の仕様・床断熱の有無・日射遮蔽の状況(庇・シャッター・外付けシェードの有無)

外皮性能は部分改善だけでは評価しづらいため、全体を俯瞰した診断が必要です。

ステップ②改善の“優先順位”を決める

断熱等級5に近づけるには、部位ごとの優先度を見極める必要があります。


特に既存住宅では“改善しやすく、効果が大きい部分”から取り組むのが現実的です。

■優先順位の目安(表)

優先度部位理由
優先1窓(外窓交換)UA値・ηAC値の両方に直結し、効果が最も大きい
優先2屋根断熱夏の快適性を劇的に改善し、3階建てで効果大
優先3外壁断熱UA値の底上げに大きく貢献(外壁工事時が最適)
優先4床断熱体感向上に寄与。効果は中程度だが重要

窓→屋根→外壁→床の優先順位が基本ですが、家の形状・築年数により変わる場合もあります。

ステップ③補助金の併用可能性を確認する

断熱性能を向上させるリフォームは、国・東京都・区の補助金が利用できるケースが多く、“補助金前提”で計画を立てると費用負担が大幅に下がります。

■利用を検討したい主な補助金

・先進的窓リノベ2026事業・給湯省エネ2026事業(断熱とは別枠で併用しやすい)・東京都の太陽光・断熱関連補助・23区の個別補助金(例:窓・外壁・高断熱化支援など)


※補助金ごとの詳細な金額・条件は、以下の関連記事をご参考にしてください。

【関連記事】

【2025年最新】ZEHリフォームは補助金でお得に!東京都・23区・国の支援制度と費用例を徹底解説(後半)

ステップ④工事時期・予算・住みながらの工事可否を整理する

断熱工事は部位によって工期や難易度が大きく異なります。


特に既存住宅では「住みながら工事できるのか」「どの工事を同じタイミングで行うべきか」が重要です。

■工事難易度の目安

部位工事のしやすさポイント
窓非常に高い住みながら1日で完了しやすい
屋根中〜高足場が必要。3階建ては工期が長い
外壁中〜高外壁張り替え時にセットで行うのが理想
床中床下点検口の有無により難易度が変動

無理のない予算で段階的に行う場合は、窓→屋根→外壁(張替え時)→床の順で進めるのが現実的です。

ステップ⑤“断熱等級5相当”に近づける組み合わせを考える

最後は、家の形状・築年数・予算に合わせて「どの組み合わせで等級5相当を目指すか」を判断します。

■例:コストと効果のバランスが良い組み合わせ

・窓:樹脂サッシ+Low-E複層(遮熱)・屋根:150〜200mm断熱+遮熱ルーフィング・外壁:次回の張替え時に付加断熱で強化・床:高性能床断熱or基礎断熱・日射遮蔽:外付けシェード+庇

特に都市部では、断熱+遮蔽のセットが最も体感に効きます。

⑨:よくある質問

断熱等級5やZEHに関心のある方からは、似たような“誤解されやすい質問”が寄せられます。

ここでは、特に重要な3つを取り上げてわかりやすく解説します。

Q1.内窓だけで断熱等級5相当になりますか?

A.結論として、内窓だけで断熱等級5相当の外皮性能に到達するのは難しいのが現実です。


理由は次の通りです。

・等級5は「外皮全体のUA値/ηAC値」で評価される・内窓の評価は原則“開口部の一部改善”にとどまる・外窓がアルミサッシのままなら性能は底上げしにくい

ただし、次のケースでは内窓の効果が高く現れます。

■内窓が効果的なケース

・既存の外窓が比較的性能の高い複合サッシ・西日が強く“室内側の遮熱”が必要な場所・防音や結露対策と組み合わせたい場合

内窓は“改善の第一歩”としては非常に有効ですが、等級5相当を目指すなら外窓交換との組み合わせが前提と考えるのが現実的です。

Q2.断熱を強くしすぎると“夏が暑くなる”って本当ですか?

A.半分は正しく、半分は誤解です。

断熱を強化すると一度入った熱が逃げにくくなるため、日射遮蔽が不十分な家では“熱ごもり”が発生します。


これは都市部、とくに東京23区では起こりやすい現象です。

ただし、これは断熱が悪いのではなく、断熱と日射遮蔽をバランスよく整えていないことが原因です。

夏の快適性は次の要素で決まります。

・窓の遮熱ガラス・外付け日射遮蔽(シェード/外付ブラインド)・屋根断熱+遮熱ルーフィング・ηAC値(夏性能)を下げる設計

断熱=冬
遮熱=夏

という役割を理解すれば、夏が暑くなる問題は避けられます。

Q3.3階建てで断熱等級5を目指すのは難しいですか?

A.難易度は上がるものの、十分に可能です。

■3階建てが不利といわれる理由

・屋根直下の3階が夏に最も熱を受けやすい・外壁面積が大きく外皮性能の総量が増えやすい・吹き抜けなどの形状で熱ムラが生じやすい


ただし、以下のポイントを押さえれば、3階建てでも等級5相当の快適性を十分に実現できます。

■3階建てで効果が大きいポイント

・屋根断熱を150~200mm以上に強化・樹脂サッシ+Low-E複層への外窓交換・外付けシェードで日射遮蔽を強化・3階のエアコン効率を上げる設置位置の工夫

最も重要なのは、「窓」と「屋根」への重点投資です。

⑩:まとめ

断熱等級5は、これからの住まいづくりで重要な基準のひとつです。

ただし既存住宅では、“基準そのものを取得する”のではなく外皮性能を等級5の水準に近づける戦略が現実的です。

この記事で解説したように、断熱等級5を目指すうえで特に重要なのは次の3点です。

・外皮全体のバランス(窓・屋根・外壁・床)・ηAC値(日射の入りやすさ)を意識した夏対策・補助金を併用した現実的なリフォーム計画

外皮の一部だけを強化しても体感は安定しません。

窓で性能の下支えをしつつ、屋根・外壁で外皮全体を底上げし、都市部ならではの日射遮蔽もセットで考えることが大切です。

東京都23区では敷地条件や大開口の多さから、断熱等級5の実現が難しく感じられる場合もありますが、


「窓→屋根→外壁→床」


の優先順位で改善を進めれば、等級5相当の快適性に近づけることは十分可能です。

断熱でお悩みの際は、実際の建物の状況を踏まえた最適なリフォーム方法を提案できる専門会社に相談してみてください。

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監修者
大久保 洋司
株式会社ファミリーDesign

Director

約30年と経験豊富な建築士です。
細かいことから大きなことまで、お客様の視点に立った提案をします。
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【保有資格】
一級建築士
監理技術者
マンションリフォームアドバイザー
既存住宅状況調査技術者
既存住宅アドバイザー

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