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断熱材の厚みは何ミリ必要?ZEHに近づく“最適バランス”を専門家が解説|素材・付加断熱との組み合わせが鍵(前半)

断熱材の厚みは外皮性能(UA値)に影響します。

しかし「何ミリ入れれば良いのか」を厚みだけで判断すると、十分な効果が得られないことが多く、素材の性能(λ値)や家の形状によって最適な厚みは大きく変わります。

特に東京23区では、外壁の構造や敷地条件によって“取りたい厚みが取れない”ケースも多く、厚みより「どこで性能を確保するか」を考えることが重要です。

本記事では、ZEH向け断熱材の厚みを検討するうえで押さえたい次のポイントを分かりやすく整理します。

・厚みがどう決まるのか・厚みより重要な「断熱材の性能(λ値)」・屋根・壁・床で厚みが変わる理由・付加断熱で厚みを確保する方法・厚みだけではZEHにならない理由

ZEHリフォームを検討している方が“厚みの正しい判断基準”を理解できる内容になっています。ぜひ参考にしてみてください。

>>付加断熱の活用や、ZEHに近づけるための“厚み×素材”の最適バランスについては“ZEH×断熱材の厚みまとめ後半”をご覧ください。

①:ZEHで断熱材の“厚み”はどう決まるのか

ZEHの外皮性能を満たすために必要な断熱材の厚みは、単に「◯mmあればOK」というものではありません。

最適な厚みは家の条件・断熱材の種類・部位ごとの熱の伝わり方など、複数の要素によって決まります。

この仕組みを理解すると、「厚みだけを増やしたのに性能が伸びない」失敗を防げます。

厚みは“断熱材の種類”によって大きく変わる

断熱材は、素材によって熱の伝わりやすさ(熱伝導率=λ値)がまったく異なります。


同じ性能を出す場合でも、必要な厚みは素材ごとに次のように変わります。

素材熱伝導率(λ値の目安)必要厚みの傾向
一般グラスウール0.038〜0.040厚みが必要になりやすい
高性能グラスウール0.032〜0.035標準より薄くできる
フェノールフォーム約0.020薄くても高い性能を発揮
硬質ウレタンフォーム0.024〜0.026高性能で厚みを抑えやすい

同じUA値を満たす場合でも、「グラスウールは120mm必要→フェノールなら60〜80mmで達成」といった違いが生まれます。

厚みは“地域区分”でも変わる

ZEHでは、地域区分によって求められる外皮性能が変わります。


東京23区は地域区分6で、北海道(区分1)や東北(区分2)と比べると求められる断熱性能の基準は比較的緩やかです。

同じZEHでも、東京と北海道では必要な厚みが全く違うのです。

これは厚みの絶対値ではなく、UA値(外皮平均熱貫流率)という「外皮性能の目標値」の違いが原因です。

厚みは“部位(屋根・壁・床)”で決まる

断熱材の厚みは、部位ごとに必要量が変わります。


特に屋根は日射の影響が大きく、壁よりも厚みが必要なケースが多いのが特徴です。

・屋根→厚みの効果が大きく、ZEH達成の鍵・壁→素材の選び方で厚みを調整しやすい・床→厚みより工法(基礎断熱/床断熱)で性能が決まる

部位ごとの“役割の違い”を理解することが、厚みの最適化に直結します。

厚みだけでは“ZEHの可否”は判断できない

結局のところ、ZEHは「断熱材の厚み」ではなく“外皮性能の総合値(UA値)”で評価されます。

・窓の性能・外壁の断熱方法・屋根断熱の厚み・床断熱の仕様

これら外皮すべてのバランスでZEHを満たすかが決まります。

そのため、厚みだけを増やしても「窓がアルミサッシのまま」「屋根だけ薄い」「日射遮蔽が弱い」といった場合はZEHを達成しづらくなります。

必要以上の厚みを入れるのではなく、家全体の外皮性能を“どこで稼ぐか”を考えることがZEHの成功ポイントです。

②:厚みより「断熱材の性能(λ値)」が重要な理由

断熱材の厚みを検討する際、多くの方が「厚ければ良い」と考えがちですが、実際には厚みよりも“断熱材そのものの性能(熱伝導率=λ値)”のほうが住宅性能に直結します。


ZEHを目指すうえでも、この考え方を理解しておくことは欠かせません。

厚みではなく“熱の伝わりにくさ”が性能を決める

断熱材の性能を測る基本指標が熱伝導率(λ値)です。


この数値が小さいほど熱が伝わりにくい=高性能な断熱材であり、少ない厚みでも高い断熱性を発揮します。

例:
・一般グラスウール(λ≒0.038)
・フェノールフォーム(λ≒0.020)→数字が約半分なので、必要な厚みを大きく抑えられる

つまり、同じUA値を達成する場合でも、素材によって必要な厚みが大幅に変わるのがポイントです。

厚みの“数字だけ”を見ると失敗しやすい

厚みだけで判断すると、次のような誤解が起きます。

・「壁が120mmなら十分だろう」
・「この断熱材は厚みがあるから高性能だ」
・「薄い断熱材=性能が低い」

実際には、“厚くても性能が低い断熱材”“薄くても性能が高い断熱材”は普通に存在します。

そのため、ZEH向けの断熱を検討する際には厚みより先に“断熱材の種類と性能(λ値)”を確認することが重要です。

断熱材の性能差で「確保できる厚み」も変わる

既存住宅のリフォームでは、壁の中に入る厚みが限定されるケースが多いです。

・外壁の胴縁の厚み
・壁内の空間
・構造上の制限
・外張り(付加断熱)ができない外観ルール

こういった条件があるため、壁内の厚みが限られている住宅では、“薄くても高性能な断熱材”が必須になることがあります。

ZEHを目指すために、厚みを増やせる家・増やせない家があるということです。

屋根・壁・床で“最適な性能”が変わる

断熱材には種類が多く、得意・不得意があります。

例:
・屋根→高性能・高耐久の断熱材が向く・壁→施工性の良いグラスウールor高性能品・床→XPS(押出法ポリスチレンフォーム)が安定

同じ素材で統一する必要はなく、部位ごとに“必要性能を満たす素材”を選ぶほうが厚みのバランスがとりやすいのが実務での基本です。

厚みは“最後に調整する項目”と考える

ZEH向けの外皮性能を設計する場合は、

①UA値の目標
②素材(λ値)の選定
③施工性・費用
④結露リスク(室内側/外側)
⑤付加断熱の有無
⑥部位ごとの必要性能

これらが決まってはじめて「厚みは何mmにするか」が決まります。

つまり、厚みは最初ではなく“最後に決まる値”です。

③:部位別で厚みが変わる理由(屋根・壁・床)

断熱材の厚みは部位ごとに必要量が変わります。

これは、熱の伝わり方、日射の影響、施工方法といった条件が異なるためで、ZEHの外皮性能を安定させるためには「厚みをどこで確保するか」の優先順位を知る必要があります。

屋根は“日射負荷が大きい”ため厚みが必要

屋根は夏にもっとも強い日射を受ける部分で、外皮の中で最も過酷な部位です。

このため、壁よりも厚い断熱層が必要になります。

■屋根で厚みが必要になる主な理由

・屋根直下の温度が外気より大きく高温になることがある・夏の熱が室内に入り込みやすく冷房効率が低下する・冬も上方向に熱が逃げやすく、厚みのメリットが大きい・日射を遮る部材が少なく、熱負荷の影響がダイレクトに出る

特に3階建ての住宅は屋根の性能差が体感に直結しやすく、ZEHを目指すなら150〜200mm前後がひとつの目安になります。

壁は“断熱材の種類”で厚みが大きく変わる

壁は屋根ほど日射の影響が強くないため、必要な厚みは素材の性能(λ値)に大きく左右されます。

■壁の厚みが変わる要因

・断熱材の種類(GW・フェノール・ウレタン)・外張り(付加断熱)の有無・地域区分(東京23区は必要性能がやや低め)・既存住宅の壁内スペース(厚みを広げられない家も多い)

ZEH基準を満たす場合も、一般的なグラスウールだけで厚みを増やそうとすると壁内に収まりきらないことが多く、既存住宅では特に高性能断熱材や付加断熱の併用が重要になります。

床は工法の影響が大きい

床の断熱は、壁や屋根と違い「厚みを増やせば性能が上がる」という構造にはなっていません。

なぜなら、床は断熱材の量より基礎断熱か床断熱かの違いで性能が大きく変わるためです。

■床で厚みが変わりにくい理由

・床下の高さが一定で、厚みを増やせる余裕が少ない
・床断熱は断熱欠損が起きやすく、厚みだけでは対応できない
・基礎断熱なら“外側で囲う”ため厚みに依存しづらい

ZEHでは基礎断熱が採用されるケースもありますが、気密施工が伴わないと逆効果になる点には注意が必要です。

部位別の「厚みの考え方」まとめ表

部位厚みが必要な理由ZEH向けの考え方注意点
屋根日射負荷が最大、冬も熱が逃げやすい150〜200mmの高性能断熱が目安遮熱材の併用で夏性能が大幅改善
壁素材の性能(λ値)で厚みが変わる高性能断熱材+付加断熱で調整既存住宅は壁内スペースに制限がある
床厚みより工法と気密の影響が大きい基礎断熱or床断熱の選択が重要気密性を確保しないと逆効果

部位ごとに必要な厚みの考え方が異なるため、ZEHを目指す場合は「どこの厚みで性能を稼ぐか」を設計の段階で判断することが重要です。

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監修者
大久保 洋司
株式会社ファミリーDesign

Director

約30年と経験豊富な建築士です。
細かいことから大きなことまで、お客様の視点に立った提案をします。
気軽にご相談ください。よろしくお願いします。

【保有資格】
一級建築士
監理技術者
マンションリフォームアドバイザー
既存住宅状況調査技術者
既存住宅アドバイザー

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