断熱等級5とは?都市部でも実現できる性能の基準と“ZEHとの違い”を専門家が解説(前半)

断熱リフォームを検討する際、「ZEHと断熱等級の違いが分からない」「どこまで性能を上げるべきか判断しづらい」と感じる方は多いものです。
また省エネ基準(等級4)では物足りなく感じる一方、ZEHを目指すにはハードルが高く、ちょうど良い基準が分かりにくいという声もよく聞かれます。
そこで注目されているのが、2022年に新設された“断熱等級5”です。
省エネ性と現実的な費用感のバランスが良く、ZEHを視野に入れる際の基準として選ばれつつありますが、メリット・デメリットやリフォームでの実現可否など、判断が難しい点も残ります。
本記事では、断熱等級5の基礎・ZEHとの違い・仕様の考え方を整理。
東京都23区で断熱性能を高めたい方が“どこまで目指すべきか”を判断しやすいよう、実践的なポイントをまとめました。
>>断熱等級5に近づけるための“外皮別の推奨仕様”については“ZEH断熱等級5まとめ後半”をご覧ください。
目次
①:断熱等級5とは?最新基準の位置づけと背景

断熱等級5は、2022年の基準改正で新たに導入された外皮性能の上位区分です。
これまで一般的だった等級4より一段高い性能が求められ、快適性や省エネ性の底上げにつながる指標として注目されています。
しかし、ZEHとの違いや、どの地域でどこまで性能が必要なのかが分かりにくい部分もあるため、まずは基準そのものの位置づけを整理することが大切です。
等級4(省エネ基準)より高い“新しい標準”
断熱等級5は2022年の省エネ基準改正により新設された上位グレードで、従来の省エネ基準(断熱等級4)よりもさらに高い断熱性能を求められます。
これまでの日本の住宅は等級4が実質的な基準とされていましたが、ZEHの普及や電気代の高騰により、外皮性能の底上げが必要になったことから等級5が登場しました。
ZEHとの関係(似ているようで目的が違う)
断熱等級5は「外皮性能」の基準であり、暖房負荷を減らすことを目的としています。
一方でZEHは、外皮性能だけでなく
| ・エネルギー消費量 ・一次エネルギー削減 ・太陽光発電 |
など、より広い範囲の評価が必要です。
そのため「断熱等級5=ZEH」ではなく、等級5はあくまで“ZEHを実現するための土台”という位置づけになります。
東京23区は“地域区分6”でUA値は比較的クリアしやすい傾向がある
東京23区のある地域区分6では、寒冷地ほど高い断熱性能が求められないため、断熱等級5のUA値(外皮平均熱貫流率)は他地域より厳しくありません。
ただし、都市部は夏の日射の影響が強いため、UA値だけでなくηAC値(夏の指標)を適切に確保しないと快適性が落ちやすい点には注意が必要です。
等級5が求められるようになった背景
断熱等級5の導入背景には次のような要素があります。
| ・電気代の上昇による省エネ住宅のニーズ拡大 ・政府の脱炭素政策に伴う住宅の高断熱化 ・ヒートショックや健康面の課題への対策 ・ZEH基準普及のための中間ステップとしての役割 |
これらの背景から、今後の住宅市場では等級5以上が“当たり前の性能”として求められる流れが強まると考えられています。
②:断熱等級5のメリット・デメリット

断熱等級5を採用する際は、メリットと注意点をセットで把握しておくと、ZEHを目指す際の位置づけがわかりやすくなります。
断熱等級5のメリット
断熱等級5は等級4より一段高い外皮性能を備えており、快適性と省エネ性の底上げに向いています。
| メリット | 内容 |
| 暖房効率の向上 | 室温が安定し、冬の暖房負荷が減る |
| 壁内結露リスクの低減 | 外皮性能が高まり、構造材の耐久性を保ちやすい |
| ZEH実現への土台強化 | 外皮性能が底上げされ、一次エネ削減を目指しやすい |
| 補助金の対象工事と組み合わせやすい | 対象工事が広がり、費用を抑えやすくなる |
特に東京23区では暖房効率アップの恩恵が大きく、光熱費の最適化にもつながりやすい点が特徴です。
断熱等級5のデメリット
一方で、断熱等級5は施工精度や外皮バランスが問われるため、単純に断熱材の厚みだけで達成できるものではありません。
| デメリット | 内容 |
| 施工精度への依存度が高い | 気密が不十分だと性能を発揮しにくい |
| コストが上がりやすい | 複数部位の底上げが必要な場合が多い |
| 夏に暑く感じる場合がある | (断熱強化のみで日射遮蔽が不足している場合)断熱強化だけだと日射取得が過剰になるケースがある |
| 効果に偏りが出る場合がある | 3階建て・大開口・吹き抜けなど形状で影響が変わる |
特に都市部では、西日・大開口・立地条件によって冷房負荷が増えるケースがあり、断熱と日射遮蔽のバランスが重要です。
③:断熱等級5とZEHの違いを正しく理解する

断熱等級5とZEHは混同されやすいものの、目指す目的も評価方法も異なります。
ここでは両者の関係を整理し、どちらを優先すべきか判断しやすくなるよう解説します。
評価している“基準”がまったく違う
断熱等級は、あくまで「外皮性能」を評価するための指標です。
冬に外へ逃げる熱を減らし、室温を安定させることを目的にしています。
一方、ZEHは外皮性能だけでなく、一次エネルギー消費量・設備効率・太陽光発電など、住まい全体のエネルギー収支を評価する概念です。
| 項目 | 断熱等級5 | ZEH |
| 評価対象 | 外皮性能(UA値・ηAC値) | エネルギー収支全体 |
| 必須条件 | 断熱性能の向上 | 外皮性能+省エネ設備+太陽光発電 |
| 目的 | 室温の安定・快適性向上 | エネルギー消費削減・自給自足 |
| 達成のしやすさ | 新築・リフォームとも比較的目指しやすい | 設備投資と発電容量が必要で難易度が高い |
このように、断熱等級5は外皮だけの評価である一方、ZEHは「総合力」が求められるため、両者のハードルは大きく異なります。
断熱等級5の家=ZEHではない
断熱等級5は“ZEHに近づくための要素のひとつ”ではありますが、それだけでZEHになるわけではありません。
特に次の要素が欠けている場合、ZEH基準を満たせません。
| ・給湯器やエアコンなどの省エネ設備が従来型のまま ・太陽光発電の容量が確保できない ・一次エネルギー削減率が不足している ・夏の冷房負荷(ηAC値)が十分に下がっていない |
つまり等級5は「ZEHの外皮性能の土台」ですが、ZEHの“ゴール”ではないという点が重要です。
東京23区はZEHの難易度が高い理由
東京23区は地域区分6に属し、UA値は比較的クリアしやすいものの、ZEH達成には別のハードルがあります。
| ・狭小地で太陽光パネルの設置面積が確保しにくい・隣家の影響で発電量が安定しない・大開口サッシが多い住宅では、冷房負荷が高くなる・古い設備が多く、一次エネルギー消費量の削減が難しい |
そのため都市部の場合、まず断熱等級5で外皮性能を底上げしてから、太陽光や省エネ設備を組み合わせてZEHへ近づけるのが現実的です。
④:断熱等級5が求めるUA値・ηAC値とは

断熱等級5を理解するうえで欠かせないのが、UA値とηAC値という2つの指標です。この2つは「冬」と「夏」の快適性を左右する基準であり、ZEHとの違いを理解するうえでも重要です。
UA値(外皮平均熱貫流率)は“冬の指標”
UA値は住宅全体からどれくらい熱が逃げやすいかを示す値で、数値が小さいほど優れています。
断熱等級5の基準は地域によって異なりますが、東京23区(地域区分6)では比較的クリアしやすい水準です。
| ・地域区分6では、UA値0.6以下が基準の目安・等級4(省エネ基準)より“ワンランク上”の性能・窓・外壁・屋根・床の外皮強化がUA値に直結する |
UA値は主に冬の性能を示す指標で、室温の安定や暖房負荷の削減に大きく影響します。
ηAC値(イータエーシー)は“夏の指標”
ηAC値は、“住宅がどれだけ夏の日射を室内に取り込むか”を数値化したものです。
夏の冷房効率や日射遮蔽の効果に直結するため、都市部の住宅では非常に重要です。
| ・大開口のある家はηAC値が悪化しやすい・遮熱ガラスや外付け日よけがηAC値改善に有効・UA値と違い、窓の仕様や外付け日射遮蔽で大きく変わるのが特徴 |
断熱性能が高くなるほど室内の熱が逃げにくくなるため、夏に熱がこもりやすいという“断熱強化の副作用”も起こりやすく、ηAC値の改善は避けて通れません。
UA値だけ満たしても“断熱等級5の体感”にはならない理由
断熱等級5を達成する際はUA値だけが注目されることがあります。
しかし実際にはηAC値が十分に改善されていないと夏の冷房負荷が増え、体感が不安定になります。
断熱強化後に「夏が前より暑い」と感じやすいケースは次の通りです。
| ・西向き・南向きの大開口がある・遮熱ガラスではなく断熱ガラスを採用している・外部の日射遮蔽(すだれ・アウターシェード・庇)が弱い |
UA値は「冬の快適性」、ηAC値は「夏の快適性」を左右するため、どちらもセットで考える必要があります。
ZEHとの比較で見る“UA値・ηAC値の役割”
ZEH基準でもUA値の上限は定められていますが、夏の性能であるηAC値は数値として求められていません(ただし、設計上は重要な要素です)。
一方、断熱等級5ではηAC値も確認するため、夏の性能についてより明確な視点を持つことができます。
| ・ZEHは「年間のエネルギー収支」・断熱等級5は「外皮性能そのもの」・ηAC値の有無が、夏対策の明確さに影響 |
そのため、都市部の戸建てでは「等級5を満たす外皮性能+ZEHでの一次エネ削減」を組み合わせると、冬も夏も快適な住まいに近づけます。
■UA値・ηAC値・ZEHとの違いの総まとめ表
| 項目 | 内容 | 断熱等級5での扱い | ZEHでの扱い |
| UA値(冬の性能) | 外皮の“熱の逃げにくさ”を示す指標(小さいほど良い) | 地域区分6では0.6前後が目安。外皮強化が必須 | 上限値あり。断熱を強化する必要がある |
| ηAC値(夏の性能) | 夏の日射の取り込みやすさを示す指標(小さいほど良い) | 窓性能・日射遮蔽を含めて確認する必要がある | 数値として求められない(設計に任される部分が大きい) |
| 主な目的 | 季節ごとの温熱環境を整える | 冬+夏の外皮性能を底上げ | 年間の一次エネルギー収支を改善 |
| 達成のための重点ポイント | 窓・外壁・屋根・床・日射遮蔽 | UA値+ηAC値のバランス改善 | 外皮性能+省エネ設備+太陽光発電 |
| 気をつけたい点 | UAだけ満たしても夏が暑くなることがある | 夏の冷房負荷まで考慮が必要 | 設備性能によっては外皮が良くても基準を満たせない |
| 都市部での注意点 | 西日・大開口のある家でηAC値悪化が起こりやすい | 特に窓の日射遮蔽が重要 | 太陽光の設置スペース・影の影響が大きい |
⑤:断熱等級5をリフォームで満たすのは可能か?

断熱等級5は新築を前提とした基準ですが、既存住宅でも外皮性能を大幅に向上させることで“等級5相当”を目指せるケースがあります。
ただし、外皮全体で性能を評価するため、部分的なリフォームだけでは達成が難しいこともあります。
ここでは、リフォームでの実現可能性と注意点を整理します。
部分工事だけでは等級5を満たしにくい理由
リフォームでは「窓だけ」「屋根だけ」といった部分工事が選ばれることが多いものの、断熱等級は外皮全体で評価されます。
特定の部位だけ性能を高めても、他の部位が弱点のままでは外皮全体のUA値・ηAC値を満たしにくくなります。
| ・既存サッシがアルミ単板のままでは窓の評価が大きく足を引っ張る ・天井断熱を強化しても壁や床の性能が不足している場合がある ・部分断熱では“性能のつぎはぎ”となり外皮性能の底上げが難しい |
そのため、等級5相当を目指す場合は“外皮全体の底上げ”を前提に計画を立てる必要があります。
等級5をリフォームで実現しやすい住宅
すべての住宅で等級5が狙えるわけではありませんが、次のような条件がそろっている場合、比較的現実的に目指せます。
| ・築年数が比較的新しく、外壁・屋根の下地が健全・既存の窓がペアガラスや複合サッシで性能がある程度確保されている・外壁の張り替えや屋根の改修を近い将来に予定している・3階建てではなく、2階建てで外皮の総面積が過度に大きくない |
これらの条件がそろう家は、外皮全体の改修が比較的容易で、性能値に大きく近づけやすくなります。
等級5の実現が難しいケースもある
一方で、既存住宅の構造や仕様によっては、現実的に等級5が難しいケースも存在します。
| ・築年数が古く、断熱材がほとんど入っていない・外壁や屋根の断熱改修がしにくい構造(ツーバイフォーの外張り制限など)・大開口サッシが多くηAC値が悪化しやすい・狭小地で足場が組みづらく改修コストが高くなる |
「全ての家で等級5を目指すべき」というわけではなく、現状の性能・構造の制約・費用のバランスから判断する必要があります。
現実的には“等級5相当”を目指す考え方が適している
既存住宅の場合、基準そのものを取得するのではなく、家全体の外皮性能を等級5の水準に近づける「等級5相当」を目指すアプローチが現実的です。
| ・窓は断熱等級5相当の樹脂サッシ+Low-E複層へ・屋根・外壁は付加断熱を組み合わせて総合性能を底上げ・床は基礎断熱や高性能床断熱で底冷え対策・日射遮蔽を同時に改善しηAC値をコントロール |
※正式な等級取得には第三者評価が必要
外皮全体をバランスよく整えることで、「冬暖かく夏は暑くなりにくい」断熱等級5レベルの体感に近づけることができます。
| ファミリー工房では、ZEHリフォームの施工はもちろん、補助金の申請から書類提出、完了報告までをワンストップで承ります。 施主様は面倒なお手続きなく、快適な住まいを手に入れられます。無料で現地調査・お見積もりを承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください! >>無料お見積もり・ご相談はこちら|ファミリー工房 |

- 監修者
- 大久保 洋司
Director
【保有資格】
一級建築士
監理技術者
マンションリフォームアドバイザー
既存住宅状況調査技術者
既存住宅アドバイザー

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約30年と経験豊富な建築士です。
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